2014年4月 第46号
同調行動の問題性
四国学院大学社会福祉学科教授 西谷 清美
子ども達が、学校生活に適応するために用いる生物学的、心理学的な方法として個性の喪失があります。
なるべく目立たないようにして、教師からの注意や指導(否定的な評価)、
働きかけ、さらには他の生徒からの負の干渉(いじめ、その他の対人関係上の問題)から逃れるというものです。
具体的には、服装や髪形、持ち物、生活態度、言葉遣い等を教師(校則を含む)の指示に従い、
極力自己主張や感情表出は控えて、他の多数派の生徒との同質性を維持して行動するというもので、
多くの子ども達は意識しているか否かにかかわらず、これら同調行動によって学校生活に適応していると言えます。
生物がその捕食者の目から逃れるために擬態という方法を用いることは広く知られていますが、
ある種の環境下、集団への適応において同調行動は、擬態と同様に基本的かつ効果的な方法なのです。
さて、問題は子ども達が学校生活で身に付けたこの同調行動が、
その後の人格形成に少なからず影響を与えているということです。
例えば、大学生になっても、他者関係において自らを表現する術(経験を含む)を持ち得ないために
学友との交流の機会を失ったり、講義内容に対する質問や意見を発想することができないばかりか、
信念や価値観までもが集団への同調の結果になっていたりします。
同調はできても、他者とは異なる自らの考えを表現し行動することができないとなると、
将来の職業生活や家庭生活にも負の影響が生じるのではないでしょうか。
さらに深刻な問題として、同調行動に徹する者は、
しばしば集団に同調しない者に対する嘲笑や非難、中傷、いじめ等をする傾向があるということです。
個性的であることが周囲からは脅威として攻撃の的になるのかもしれません。
とは言え、私たちの社会生活は、家庭、学校、職場等、いずれも集団の場である以上、
周囲の他者と協調し協働することは個人に求められる大切な資質であることは確かです。
そこで、立場や意見の異なる者が協力し合うこと(協調)と、単に他者集団に調子を合わせること(同調)では、
大きな違いがあることについて知っておかなければなりません。
つまり、協調は個性を尊重していますが、同調は個性を喪失させてしまうということです。
このように同調行動は、適応することと引き換えにするにはあまりにも負の影響が大きいのです。
個々の個性やオリジナリティが真の意味において尊重され、人間の多様性を許容できる社会を構築するためには、
どのような教育を目指すべきかについて真剣に検討する必要がありそうです。
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